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定額モバイルデータ通信比較昨年のEMOBILEの参入をきっかけとし、DoCoMo、auと相次ぎデータ通信の定額制が発表された。このためRadish Network Speed Testingでもモバイルデータ通信での測定がかなり集まるようになって来た。当システムのもともとの利用回線の登録では、一度登録されたデータをクッキーに記憶していたために、自宅と外出先などの使い分けの生じるモバイル通信では、利用回線の登録自体の精度に問題を生じていた。そのため、2月末に回線の違いを検出し登録データを切り替える仕組みを導入し、統計として利用できるデータを得られるようになった。そこで早速各社の定額制データ通信を比較してみた。
下が各社のサービスの速度の分布だ。
「分布強度グラフ」【下り】【上り】※縦軸は分布強度を表しています。各集計対象に対して標準化しており、集計対象間のサンプル数をリニアに反映するものではありません。
「分布+パーセンタイル図」【下り】
【上り】
EMOBILE、DoCoMoとも公表されている仕様から想定されるまずまずの通信速度が得られていることがわかる。一方auの結果は非常に低調だ。公表されている仕様からはかなりかけ離れていると言わざるを得ない。
ここで各社のサービスの仕様も簡単に比較してみよう。
各社のサービス仕様は以下の通りで、料金は端末代と通信費を分離したコースで2年以上使用した場合のものをピックアップしてある。音声通信と同じく料金体系はそれなりに複雑だが、大体料金の特徴を捉えた選択になっていると思う。
低調な「au WINシングル定額」auの測定結果が低調である原因だが、備考の通信制限が原因になっていることは考えられる。測定ではある程度のサイズのデータを実際に流すことで測定を行うので、ここで通信速度の制限が働くのかもしれない。
測定データが大きすぎるデータだとみなされているのならば、計算上1MB程度のデータですでに制限がかかっていることになる。auでは「一般のwebブラウジング等その他の場合においては、EV-DO方式の高速性を最大限に活かし快適なデータ通信サービスをご利用いただけます。」としているが、1MBのデータがサイズとして一般的なWeb素材ではないと言うことなのかもしれない。Webベースのメールやスケジュールなどレスポンスがユーザビリティーを大きく左右するようなシーンではそれでもそれなりの価値があるかもしれないが、高速通信の一番のありがたみは大きなデータの転送の容易さであり、そういう意味では現在のスループットが通信制限のためならば、たかだか数10秒の間も高速なデータ転送ができない現在の状態は「高速性」と言う意味ではかなり利用価値が制限されたものと言わざるを得ないだろう。
ダントツな低価格のEMOBILE価格を比較してみると「ありえなーい♪」というEMOBILEだがたしかに、他社の料金設定とは一線を画した低価格だ。上限が\4,980でプロバイダ料なども含まれている。各社とも料金は下限と上限を設定とした段階的な定額制となっているが、もっとも大転送量で上限に達するDoCoMoでも上限の金額になるのは転送量で120MB程度となっている。使い方にもよるだろうがPCニーズの使い方をしていれば比較的すぐに料金の上限に達すると思われる。
「月間の転送量と料金の関係」*DoCoMoはmoperaの料金を含まない
上の料金はデータ通信のみの値段だが音声通信を含めるとEMOBILEの優位性はさらに強くなる。他社ではデータ通信は音声通信と別に契約する必要があるが、EMOBILEでは音声通信は無料のおまけでついてくるような形だ(通話料は18.9円/30秒)。音声通信の可能な端末でPCのデータ通信を行うこともでき、S11HTでは工夫すれば無線LANのアクセスポイント化することすらできるようだ(特別なことをしなくてもそのように使えればさらに魅力的なのだが)。
サービスエリアだけが弱点のEMOBILEだが、サービスエリアの拡大の速度もますます加速している感じがある。昨年はまずは人口密集地からという戦略がはっきりとわかる拡大スケジュールだったが、現在の拡大予定を見ると、そこそこ人が住んでいればアンテナが設置できるところからどこでも拡大していくという戦略に見える。
このペースでいけばあまり時間もかからずにサービスエリアの問題もそれほど気にならなくなるのではないだろうか。
サービスエリアと速度で優位なDoCoMoも制限はいろいろDoCoMoがサービスエリアで優位なことは言わずと知れたことだが、速度面でも測定結果だけ見ると最もよい結果を出している。ただし、DoCoMoのサービスは使用できるプロトコルに制限がありマルチメディア関係を中心に利用できないものが多く、代表的なところではSkypeなどが利用できない。また、転送できるデータサイズも300MBに制限されている。プロトコルの問題に関してはVPNを用意できれば回避可能だが、手軽に対応できるとは言いがたいだろう。P2Pなどの高負荷な利用を減らす意味もあるだろうが、EMOBILEのサービスがメインの回線としても使えそうなサービスであるのに対して、あくまでもサブの回線として使ってほしいということかも知れない。
とはいえエリアと速度のアドバンテージを考えると魅力的なDoCoMoだ。やはり価格面が一番の弱点だろう。上限が\9,300と他社より割高な上、ISPとして\840/月のmoperaを使用する必要がある。低価格が売りのEMOBILEがISP込みなのは別としても、auは一般的なISPを利用できるので、有線の回線で使用しているISPを追加料金なして利用できるユーザーも多いだろう。
各社二長一短以上をまとめると速度・価格を優先すればEMOBILE、エリア・価格を優先すればau、エリア・速度を優先すればDoCoMoという選択肢になるだろう。
※速度的にはもっとも成績のよいDoCoMoだが制限が多いため通信性能は○とした
今後データ通信の定額制の台風の目であるEMOBILEがサービスエリアを広げるに従い、また大きな波がやってくるのではないだろうか。他にも次世代PHSでのWILLCOMの巻き返しなど注目されることは多い。ハードに目を向けてもIntelのAtomなど、従来紐に繋がれていたリッチなITリソースがモバイルに解き放たれるための役者がそろってきたようだ。
Ryuji K. 2008/05/21
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